ダイエット奮闘記+降圧療法

医師が生活習慣病になったとき

平成16年1月23日午後、自分が高血圧であることを知った。

今まで血圧には絶対の自信があり、いつ測っても収縮期血圧120台、拡張期血圧80台で、自分にとって「高血圧」とは「仕事の対象」でしかなかった。

それが、いきなり、収縮期(いわゆる上の血圧)150台~160台、拡張期(下の血圧)110台~120台である。測定してくれた看護師もびっくりであった。

思えば、この半年ほど自らの血圧を測ったことはなかった。たまに、勉強会で行く太田市医師会事務局に置いてある自動血圧計で計ることがあり、いつも正常で「よし、やはり俺は高血圧にはならない」と過信ぎみであった。正確には記憶していないが、半年前頃はまだ高くなかったはずだ。ということは、この半年間で急激に上昇したのだろう。

体重は確かに増加してきており、そろそろなんとかしなければ、と思っていた矢先であった(十数年前は60数キロ、現在は73キロ。今年の年賀状でも「体重減少を図る」と宣言したばかり)。

血液検査は、アルコール性肝障害があるので(γ-GTPが70以上)数か月に一回は行って気にはしていたが、血圧に関しては「ノーマーク」であった。

この高血圧が「判明」した日、血液検査も3か月ぶりに行った。アルコールを若干減らしたこともあり肝機能は正常化したものの、総コレステロール値がこれまでの最高値260台となっていた。これまでいつも200前後、高くても220台だった。これもショックであった。「高血圧+高脂血症」が無症状のうちに同時に起こっていたのだ。

両疾患とも、過食・過飲・運動不足・肥満によるものであることに間違いない。おまけに、遺伝的にも、父や兄に高血圧傾向がある。

遂に、「医師河辺啓二」も成人病―生活習慣病患者の仲間入りである。

これは、死期を早めるなということと、自分も病気を持つことによりもっと「いい医者」になれという神の啓示とではないかと受け止めている。

確かに40歳代後半ともなれば、慢性疾患の一つや二つあって不思議でない。農林水産省の事務官同期十数人の中にも降圧剤を服用している者が少なくとも二人はいることを知っている(もっといるかも)。

そこで、肥満・高血圧・高脂血症の治療を開始した。

これが河辺式ダイエット法だ

① 運動しなくてもやせられる

② 週3回は、美食もアルコールもOK

(1)周りに宣言する
どんなにカタイ意志を有していても、ついつい流されて行くのが人間の常。ダイエットするぞ!と強い決意をしようとも、何か「シバリ」がないと「ま、いいか」となってしまう。そこで、「監視の眼」を周囲につくるのがよい。要するに、周囲の人間に宣言するのだ。私は、次のような宣言書を作って、職員控え室の壁に貼って自らを鼓舞した。また、家族向けには、この宣言書の「職員」を「家族」に書き換えて自宅のダイニングルームの壁に貼ったのである。


河辺啓二、ここに宣言す!

私 河辺啓二は、減量に努め、

現在73キロある体重を本年中に

60キロ台前半の体重まで

下げることを誓います。

失敗した場合は、職員の皆様の

どんな仕打ちにも耐えることを

約束いたします。

2004年2月1日


(2)缶コーヒーからの離脱
これまでの私の朝の生活は次のとおり。朝起きると、トイレ+洗面を終え、郵便受けの新聞を取りに行く。その後、7時30分頃には1階のクリニックの玄関を開けて、院内の自動販売機で缶コーヒーを買い、診察室でそれを飲みながら新聞に目を通す。8時前には、これらを終えて、2階の自宅にもどって、登校前の子らの喧騒の中、朝食をとる。

(3)コーヒーからの離脱

自宅でコーヒーを作って・・・などという時間がないこともあって、缶コーヒー以外のコーヒーは、朝の11時頃と午後5時頃、職員の入れてくれるものを飲んでいた(次々と診察する患者さんと2時間も続けて話しているとノドが乾くので、午前と午後の診療の合間に急いで飲み物を口に入れている)。

私は、コーヒーは、砂糖とミルク入りが好きなので、そうしてもらっていたが、この習慣も変更して、各種のお茶を入れてもらうこととした。大きなドラッグストアに売っていた、健康茶、ダイエット茶、減肥茶、どくだみ茶、杜仲茶、プーアル茶、ウーロン茶などを買い込んで来たのだ。ひたすら、朝、夕、晩は自宅で、午前、午後は仕事場で、と1日5杯、これらのお茶を飲むようになった。

(4)アルコールからの離脱

私の家系は酒飲みである。死んだ父は働き者百姓だが、大酒飲みだった。3人の兄たちも酒好きだ。自分は、若い役人時代から少しずつたしなむようになってはいたものの、医学生時代には(学業に差し支えるのではとも思い)ほとんど飲まなかった。東大病院で働いていたときも、酒飲む余裕なんてなかった。自分は、父や兄たちとは違うのだと思っていた。

ところが、開業医になった頃から、毎日飲むようになってしまった。いわゆる「休肝日」なしで、毎晩、仕事の後、自宅で、350mlの缶を、少なくとも2缶、通常は3~4缶は飲んでいた。内容は、主にビールとチューハイである。

肝臓に関しても、変な自信があって、こんなに休みなくアルコール摂取していても、血液検査で肝機能異常が出てこないので、「河辺の家系は、遺伝的に肝臓は強いに違いない」と思っていた。

しかし、これは過信だった。血液検査の結果だが、γ-GTPが徐々に上昇し始め、GPTまでをも引っ張り上げ始めたのだ。3~4缶は飲んでいたアルコールを1~2缶に減らすとともに、いわゆる「休肝日」を週1~2日ほどつくるようにした。すると、GPTは正常化に向かい、γ-GTPも下がってきた。と言っても、正常値上限前後である。

今回、ダイエットを開始するに当たり、原則アルコールはやめよう、と考えた。以下に平成15年から記録を始めた月別休肝日数を示す。

15年1月―6、2月―4、3月―6、4月―6、5月―7、6月―7、

7月―7、8月―8、9月―10、10月―6、11月―5、12月―7

16年1月―6、2月―18、3月―19、4月―17、5月―14(GWのため減った)

6月―17、7月―18、 8月―15(盆休みのため減った)

16年2月からの急増ぶりは、「ダイエット宣言」してからの「忍耐」の結果である。毎日のようにアルコールを口にしていた私が、こんなにアルコールを減らしても「禁断症状」が出ないので、自分はアルコール中毒ではないのだと確信した。

血液検査の結果には、てきめん現れた。γ-GTPもGPTも、正常範囲のしかも下位の値にまで急降下した。

(5)過食からの離脱

省みるに、これまであまりに食べ過ぎていた。もともと大食漢ではないが、毎日のように、肉・魚を食べていた。特に、時間帯が悪い。夜、診療の後の事務整理などしてから自宅に辿り着くのが遅く、更に風呂に入ってからアルコールとともに夕食を食べる。それが10時過ぎることが多い。11時過ぎることもある。しかも、満腹になるまで、飲み食いしてしまうのだ。これでは太るのが当然だ。開業医になってから、年数キロずつ増えていくのを実感した。テレビに出演した際など、後に、久しぶりに私の姿をブラウン管ごしに見た知人らに「カンロクついたね」と言われた。カンロクとは、要するに太ったという意味なのだろうと解釈している。

そこで、原則として、三食を「まともな食事」としないこととした。以下に、私のダイエット食事を紹介する。

朝食:食べ物―玄米コーンフレーク+低脂肪牛乳 飲み物―減肥茶

昼食:食べ物―玄米コーンフレーク+低脂肪牛乳 飲み物―減肥茶

夕食:食べ物―①人参スティック(何もつけない)、②キャベツサラダ(何もつけない)③玉葱スライス(これはさすがに何もつけないと苦くて食べられないので、ぽんず醤油等を少量つける)、④セロリスティック(③同様、多少は味をつけて食べる) 飲み物―減肥茶

要するに、「ごはん」は全く食べない。玄米フレークは、友人の滝澤医師のお勧めフードである。玉葱スライスは降圧効果があるというが、どうだろうか。私のイチオシダイエット食品は①の人参スティックである。何もつけなくとも結構美味しい。これだけで夕食を済ますことも多い。娘らには「お父さんの食物はうさぎと同じだ」とからかわれる。

(6)「三緩(甘)四厳法」

(4)や(5)を厳格に実施して、アルコールや肉料理を完全に断っていたら、おそらくストレスが高まるであろう。毎日「厳」では長続きはしないものだ。そこで、「厳」が2日できたら、「ごほうび」として翌日は緩(ゆる)くする。つまり、月・火曜日は厳しく、水曜日は緩く、木・金曜日はまた厳しく、そして、週末の土・日曜日は緩くする。これならストレスは、あまりたまらない。

私は、週初めの月曜、世の中の多くの人同様、「さぁ、新しい1週間の始まりだ!」と自分に気合を入れて仕事に臨む。この際、「今日(月曜)と明日(火曜)は、「厳」でがんばろう!」と心の中で叫ぶことにしている。

無事、2日間「厳」で過ごせたら、週中日の水曜日は、楽しみの「解禁日」。と言っても、朝食や昼食はいつもどおりにすることが多い。夕食は、外食でアルコールとともに、ステーキなど「ごちそう」を腹一杯食べる。

アルコールと「ごちそう」を摂取したいという欲望が満たされたら、翌日の木曜から再度、質素な食生活に。これも、「木・金曜日の2日間耐えれば、土・日曜日には、また、アルコールと「ごちそう」が摂取できる」と思えば、ほとんど苦にならない。

そして、いよいよ土曜日。といっても、この日も、朝は粗食で済まし、診療の終わった午後~夕刻に、家族とレストランに「ごちそう」を食べに行く。昼食でも夕食でもない時間帯だから、どこも空いている。アルコールも飲む。

日曜日も緩くするが、無理して緩くしないようにしている。アルコールは、飲みたいと強く思わなければ、飲まないようにしている。

このような1週間を繰り返していると、胃も収縮してか、「過食」できないようになるし、アルコールも大量に飲めないカラダになっていく。

気がつくと体重が減っているのだ。

河辺啓二の体重・血圧の変化

月日体重(kg)最高血圧最低血圧
1月23日73150102
1月25日72.5
1月27日150110
1月28日165112
1月30日168106
2月1日(職員・家族にダイエット宣言)
2月2日156102
2月3日136104
2月6日14494
2月7日14092
2月13日154100
2月16日70.2
2月17日70.613698
2月18日医師会で13094
2月19日140104
2月22日69.8
2月23日13892
2月25日12692
2月27日医師会で13092
3月8日69.4142106
3月9日68.4
3月11日13688
3月15日68
3月16日医師会で12688
3月17日136104
3月18日67.6
3月19日67
3月22日67.8
3月23日12288
3月27日67.8
3月28日67.2
3月29日121688
3月30日66.4
4月2日66.4
4月3日66.2148104
4月4日65.6
4月6日66
4月7日160102
4月8日13298
4月10日66
4月11日65
4月12日13688
4月14日65.213496
4月15日13092
4月16日65.2
4月17日6513698
4月18日65.4
4月19日64.4
4月20日12486
4月22日66.4128102
4月23日64.8
4月24日64.2
4月25日64
4月26日64.2
4月27日12094
4月28日64.6
4月30日64.8
5月6日66.6
5月10日13696
5月12日14488
5月14日64.2
5月17日64.2
5月18日64.2142100
5月23日65.2
5月24日64.2
5月25日13494
5月26日14498
5月29日63.6
5月30日63.4
6月5日14086
6月7日64.2
6月10日12094
6月12日6414690
6月15日14096
6月16日63.2
6月17日146104
6月18日150102
63.415486
6月19日63.4
7月1日63
7月2日62.6
7月11日64.114494
7月15日62.813496
7月21日62.612789
7月28日62.813496
8月11日6313590
8月21日62.813493
8月25日62.413989
8月31日62.212581
9月11日62.212987
9月20日62.414985
9月21日61.811879
9月29日61.6
10月8日61.813190
10月16日61.613780
10月27日61.9
11月13日62.6

河辺啓二の肝機能・血中脂質の変化

年月日GOTGPTγ-GTP総コレステ中性脂肪HDL
正常値8-405-403-60130-22040-15038-68
10.111124264321115856
11.3.1723274121321159
11.6.319224821610852
11.8.1119203319812050
11.11.1018185122511560
12.5.1220255521917252
12.10.1419214120915755
13.2.2318235820323957
13.8.16303970 ↑23315375
13.10.2202754213306 ↑57
14.1.2427345822923758
14.6.142853 ↑78 ↑20512463
14.7.17294062 ↑214272 ↑61
14.10.3263861 ↑206289 ↑50
15.2.28223559207289 ↑58
15.8.282944 ↑81 ↑22116663
15.10.222640 ↑68 ↑220325 ↑52
16.1.24222758262 ↑285 ↑60
16.3.119182519718657
16.5.2614123119821161
16.7.1517143018812871
16.9.2016133117713859