夫が妻の妊娠を知ったとき

私は4月に結婚し、翌年3月末に第1子を授かりました。妻の妊娠を知ったのは、8月、(医学生だった私は)夏休みで四国の実家に帰っていたときです。いわゆるハネムーンベイビーではなかったと思います。

会社勤めのため夏休みが短く、私より遅れて四国に来た妻から告げられたのであります。私は実家の農園で農作業をしていました。報告を受けた私は、「あ、そうか」としか思いませんでした。TVドラマにありがちな、歓喜にあふれてバンザイなんて気は毛頭起こりませんでした。感情の鈍い私の人格からなのか、とにかく子供が生まれるという「実感」が湧かなかったのであります。

私は、自分のことを冷酷な人間だとは思っていないのですが、一般に初めて父親となられる方々は、妻の妊娠を知ったとき大喜びするのでしょうか。生まれてすぐの我が子(生まれてすぐは猿のようですが)に強い愛情が湧くものなのでしょうか。

父親というものは、母親より、九か月以上も「子の愛情争い」で遅れをとっているのです。母親は40週間も自らの身体の中で我が子と共存しています。お互いの絆(母と子の絆)が強くならないはずはありません。つまり、受精卵で生命がスタートしたとして、その子にとって最初の九か月強は父親は全くの「よそ者」に過ぎないのであります。

父親は、生まれてくる赤ちゃんの顔が自分とそっくりだったりすると最初から愛情が湧くかもしれません。ところが、希望する性でないほうの赤ちゃんだったりすると、失望した父親は、最初のうちは我が子を「かわいい」とは思わないかもしれません。父親が本当に「かわいい」と思い始めるのは、生まれてしばらく経って自分になついてくれるようになってからではないでしょうか。

私は、第1子出産に立ち会うことができました。初めての出産だったためでしょうか、とても時間がかかり(妻は3晩眠れず)、生まれてきた赤ちゃんは長時間産道で圧迫を受けたため、顔はむくみ、頭は伸び、まるで「宇宙人」のような顔でした。正直な話、生まれてきた我が子の宇宙人のような顔にすぐに愛情は持てなかったのです。実は、多くの夫婦にもあると思いますが、第1子の生まれる前は、妻と自分のパーツ(顔と身体)のいいところだけを組み合わせて美男or美女の赤ちゃんが生まれるのではと期待したものです。その根拠の脆弱な期待を一瞬にして打ち崩す宇宙人顔でありました。そこの病院は、助産婦さんでなく産婦人科医が取り上げます(後にこのことはRAREだと知った)。先生は「頭が伸びちゃったね」と意に介してなかったのですが、果たして翌日には驚くほどフツーの頭に戻っていました。

【予告】
・赤ちゃんがお腹の中にいるときどう過ごすべきか
・夫はできる限り出産に立ち会おう (幻滅する人は・・・)
・赤ちゃん登場で生活は激変
・家事はママ専管でも、育児はママ・パパ共管です
・帰りの遅いパパはお風呂でがんばる
・子育てとはウンチとの戦いなり
・なぜ子は親に似るのか