後発薬剤傾倒のツケ

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の医療論(37)

一部マスメディアで報道されているが、私たち医療現場にいる医師は、使いたい薬剤が使えないという、今まで殆ど経験したことがないような苦境に立たされている。特に、コロナ感染患者に多い症状―発熱、咽頭痛、咳、痰―に対応する薬剤が注文しても手に入らない状態が続いている。しかも、これらコロナ症状の薬剤だけでなく、漢方薬など他の薬剤も次々と品不足に陥っている。原因は、ある後発品製薬会社での杜撰な製造過程の発覚を発端とし、大手後発品メーカー等、次々と不適切製造管理する会社が厚生労働省から行政処分を受けていることだ。後発品供給が減少した分、先発品で補おうとしても、後発品によってシェア低下したことにより製造縮小した先発品メーカーが急速に昔の製造力に戻すことはできない。ということで、一部の不祥事後発品メーカー→全部の後発品メーカー→先発品メーカーとシワ寄せが拡大し、「ドミノ」式に薬剤不足が拡大したのである。

不祥事を起こした後発品メーカーが適切な製造過程を確立するには数年かかると言われており、厚労省も品不足を理由に行政処分の期限を短縮するわけにはいかない。つまり、今後も数年はこの薬剤不足の状態が継続すると懸念される。日本は「医療先進国」と思っていた国民は失意している。私たち医師は、病に苦しむ患者さんたちに最上の治療をしたいと思い最も適した薬剤を処方しようとしてもそれが「ない」のだ。仕方なく、セカンドチョイス、サードチョイスの薬剤で急場を凌がざるを得ないのである。

そもそもは、医療にかかるカネを減らしたいため、先発品をどんどん減らし、後発品薬剤のシェア拡大に驀進した政府の政策のツケが回って来たのではないだろうか。先発品メーカーが莫大なカネを投じて研究開発した成果を利用し金儲けに走って手抜き製造する後発品メーカーを「猫かわいがり」してきた政府は猛省してほしい。