『ゴジラ-1.0』は名映画だ

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の映画論(8)

〈久々の映画館〉

 コロナ禍で4年ブランクだけではなく、もっと前から映画館に行かなくなっていた。以前よく観に行っていた、隣市のシネコンが移転してしまってからは、映画館で映画を観ることがなくなり、更にその何年後かに襲来したのがコロナ禍であったのである。

 映画館に行かない、その期間に観た映画と言えば、テレビ放映のものか、DVDか、飛行機に乗ったときに観る機内ムービーくらいだが、大した本数ではない。

 特に、今回のようなアカデミー賞視覚効果賞を受賞するような作品だけに、映画館で観られたからこそ、その迫力を堪能できた。ちなみに私が『ゴジラ-1.0』を観たのは、アカデミー賞受賞よりもっと前であった。

〈視覚効果だけでなくヒューマンドラマとしても優れている〉

 確かに視覚効果賞に値する素晴らしい画面ではある。ただ、私は「特攻隊の落ちこぼれ」の主人公敷島浩一(神木隆之介)が、戦後の焼け野原の東京で他人の赤ん坊を抱える女性、大石典子(浜辺美波)と出会って共同生活を始めるという展開がたいそうおもしろく感じた。更に、敷島が所属することになる、機雷撤去チームの同僚が、リーダー格の秋津清治(佐々木蔵之介)、技術士の野田健治(吉岡秀隆)など個性派俳優で固めていて一層おもしろくなっていく。

〈役者たちが好演〉

名役者達が各登場人物を好演している。

二枚目俳優というほどの容姿ではない神木隆之介が、主役の気弱で優しい元特攻パイロットを見事に演じている。彼はこのまま大俳優の道を歩んで行くことだろう。

浜辺美波も、美貌だけでない、逞しさをも備えた日本女性役を演じていたし、敷島の隣家の太田澄子役の安藤サクラも、ぶっきらぼうに見えても実は心優しいおばさんをうまく演じていた。

超イケメンでないが、個性が強く、つい見入ってしまう中年男性俳優といえば、私の独断で言うと、遠藤憲一、安田顕、滝藤賢一(高年では岸部一徳、超高年では故大滝秀治)などいるが、今回の佐々木蔵之介もそうだ。いみじくも、この映画が上映中の時期に放映されていたTVドラマ「グレイトギフト」(テレビ朝日)で出世欲に取り憑かれた殺人鬼医師役を怪演していたなぁ。

あと一人、忘れられないのが、吉岡秀隆だ。私の好きな寅さん映画で、寅次郎の甥・満男役として少年期から長年演じ、長じても多数の映画やTVドラマで活躍している。今回も、白髪で優秀な技術者として大事な役を好演している。

〈私は怪獣映画大好き〉

 私は、もともと怪獣映画が大好きである。幼少期には怪獣映画が流行っていた。「キングコング対ゴジラ」「ゴジラ対モスラ」など観たいと思ったが、なにしろド田舎なので近くに映画館などなく、遠路隣町まで出掛けないといけないので、少年時代に観られた怪獣映画ーそれ以外の映画も含めてーの数は僅かだったような気がする。もちろん、当時の映画はCG、VFXなんてものはなく、最近の映画の画像から見ると稚拙だっただろうが、十分楽しめるものであったのだ。

〈近年観た怪獣映画〉

 この十年くらいで観た怪獣映画でよかったものとしては、ゴジラシリーズの前作「シン・ゴジラ」がある。2016年の映画だから、このときは移転前の隣市シネコンで鑑賞した。昔の映画・TVドラマのような「怪獣出現だ、すぐ戦闘機で攻撃」なんてことはなく、しっかりと閣議で決定し、防衛大臣が攻撃命令を出すという手続きを踏んでいたところが非常に現実的で、元官僚の私には最も印象に残っている。

 あと一つ、記憶に強く残る映画は、2017年のアメリカ映画「キングコング:髑髏島の巨神」 だ。飛行機内のビデオで観たが、とてもよくできていた。あまりにおもしろいので、初回観て数年後にも機内でもう一回観たくらいである。ちなみに、この作品はアカデミー賞視覚効果賞にノミネートされるも、受賞には至らなかったらしい。