中国の科学技術急進展に驚く
・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(35)


〈ロボットに見た中国の科学技術の高さ〉
高市発言から再燃している日中関係悪化で受ける日本経済への影響、イランなどには強硬姿勢貫くトランプ大統領の中国への歩み寄り姿勢で醸成される米中二超大国化など、中国の政治力・経済力の巨大化に項垂れ傾向の日本人は私だけでないだろう。
政治力・経済力だけでない。科学技術力も凄い。ロケット打ち上げ失敗続きの日本に対し、中国は宇宙工学でも長足の進歩を成し遂げているが、それより衝撃を受けることがあった。
先日、中国が開発した高速で走るロボット、カンフーのような跳躍するロボットの映像を見て「我が国の科学技術の敗北」を感じてしまった。日中の科学技術の差は、とうとうここまで水を開けられたのだ・・・。
かつてのロボットのイメージといえば、鉄腕アトムや鉄人28号のようなマンガは別として、移動するために下半身がクルマだったり、両下肢あっても全身を支え、安定させるためだろう太い下肢でつくられていたりしたものだ。それが今回見たロボットのスマートさ!股関節や肩関節はヒト同様、いやそれ以上に可動域が大きかった。テレビの前で驚嘆し、日本の敗北感に嘆息をもらしてしまった・・・。
〈かつては日本の後塵を拝していた〉
今でも覚えている。35年ほど前に東大教養学部理Ⅲで任意選択科目の中国語の授業(恥ずかしながらついていけなくなり何回かで脱落した)を受けていたとき、テキストに「電話」に関する記述があり、(「電話」は和製漢語)講師の先生曰く
「日本では各家庭に当たり前に電話がありますが、中国ではあまり電話はあまり普及していません。」
え~!と心の中で驚いた。1990年頃のお話である。それが、スマホだのITだのAIだの数十年で急進展して、今や日本を越えてしまったということか・・・。
〈最近まで日本が優位だったのは〉
国家としての科学水準の優秀さを比べるに、やはりノーベル賞自然科学部門(物理学・化学・生理学医学)三部門となる。これまで中国人(中国生まれ・中国系含む。台湾出身や香港出身も含む)は10人くらいいるようだが、ほとんどは米国籍で、まともな中国本土在住者は、2015年の屠呦呦、ただ1人なのである。
これに比べ、日本人は、日本生まれ外国籍を除いても24人(含めると29人)もいるのだ。ただ、このような「日本人>中国人」状態は長くはないことは明白だ。
2025年10月13日付けブログ
2025ノーベル賞 | 河辺啓二 kawabekeiji.com
の〈今はまだ日本人受賞者多い〉で今後の日本の科学技術の悲観論を述べた。そのとおり、今回のロボットを見る限り、数年後あるいは数十年後には、日本人受賞者ゼロ、中国人受賞者複数人となるだろう。
〈なぜ日本は中国に勝ち、やがて負けることになるのか〉
ここで両国の単純比較をしてみると
中国 日本
人口 14.1億人 1.2億人
国土面積 960万㎢ 37万㎢
GDP 18.7兆米ドル 4.0兆米ドル
う~ん、約12倍も人口が多いのだから、天才の数も約12倍いることになる。そもそも同じ東洋人の中国人と日本人、アタマの良さのDNAに大きな差違はないはずで、天才の出現頻度は同程度だろう。つまり、中国には日本の10倍以上の天才がいることになる。
(2026年3月29日付けブログ
「世界史」で読み解けば日本史がわかる(前編) | 河辺啓二 awabekeiji.com〈縄文時代〉で言及したとおり「自然の恵みの豊かなアジアの農耕民に科学が発達する土壌が希薄だった」という点も共通しているだろう。)
なのに、なぜ最近まで日本の科学技術が中国に圧倒的に勝っていたのか。
そこで読み返したいのが
2022年9月19日付けブログである。
気分が悪くなる名著「禁断の中国史」 | 河辺啓二 kawabekeiji.com
<第5章「科挙」>
「科挙」が難関であるということは以前からよく聞いていたが、こんなにも難しいものだということを本章を読んであらためて知った次第である。「あまたある筆記試験の中でも科挙は世界一の難関試験」だということだ。
私が若き工学部生時代、「高級官僚」を目指して「国家公務員試験上級職甲種〔経済職〕」の受験勉強を始めた頃、当該キャリア採用試験は、前身は明治時代の「高等文官試験(略して高文)」だと聞かされていた。更にそのモデルがこの中国の科挙だったような話を聞いて信じていたものだ。
どんなに貧しい平民であっても、科挙という超難関試験に合格さえすれば出世できるという仕組みは、明治維新より前の日本でなかったはずで、その点では昔の日本よりすぐれていたのかもしれない。しかし、試験科目が良くなかった。ただ一つ、中国古典の「四書五経」であった。数学や科学が全く登場していない。江戸時代から数学を勉強し、明治維新後西洋の科学文明をあっという間に吸収した日本人に比して、中国人の学問は「四書五経」オンリーであったのだ。百田氏の「十九世紀後半から二十世紀にかけて、中国が欧米列強に領土を蚕食され、半植民地となった大きな理由の一つは「科挙」にあったと私は見ています。」は言い得て妙である。
とういうわけで、明治維新時の日本人の「西洋かぶれ」が、実は科学技術発展に大きく寄与したということなのだろう。
〈中国の科学技術力が急速に発展したのは〉
最近までの日本の中国への優位性の理由の一つは上記のとおりであろうが、ではなぜ今や中国が日本を凌駕するようになったのか。天才が10倍以上いるはずであることのほか、共産党独裁政権で科学技術政策を強力に推進したからだろう。日本のように予算を握る財務省の顔色ばかり見て政策遂行しているようでは科学技術の急進展などありえない話だ。
(上記2025ノーベル賞 | 河辺啓二 kawabekeiji.com
〈今はまだ日本人受賞者多い〉参照)

