世界遺産検定マイスター一発合格

<世界遺産検定の最高峰がマイスター試験>

 何歳になっても「合格」の二文字は嬉しいものだ。世界遺産検定1級は3度目の挑戦で合格したが、1級合格者しか受験できない、世界遺産検定の最高峰=マイスター試験に1回で合格できた。1級まではすべて選択式の問題だが、マイスターはがらりと変わって、全問が記述式・論述式である。1級の試験は、かなり細かいことまで出題されるが、選択式であるため、ややうろ覚えでも正答ができる。しかし、マイスターは記述式なので正確に覚えておかなければならないものの、そのぶん1級ほど細かいことは出題されない。まぁ、難しさの質が異なると言える。

<マイスター試験の出題内容>

第1問は、世界遺産に関する用語説明が3題。対策しやすいものである。事実、本番では完璧にできた。

第2問は、世界遺産条約についての説明。これは400字の記述だが、これも「定番」の出題であり、対策は容易。ほぼ完璧に書けたと思う。

第3問が最大の山場・難関であろう。世界遺産に関するあるテーマに対して自分の意見を1200字で論述するというものである。新型コロナウイルスとか、その年、そのときに話題になっていることが出題される傾向にある。

<マイスター試験第3問の論述試験は難しい>

限られた時間の試験で1200字という文章を書くことは容易ではない。今まで、数々の試験を突破してきたが、1200字という、いわば「小論文」形式というのはあまり記憶にない。東大入試の国語の作文は200字程度だっただろう。国家公務員上級職試験の二次試験で書いた経済原論の問題は何文字だったかなぁ。1200字はなかったはず。

以前、朝日新聞「声」投稿をよく書いた時期があったが、だいたい500字~600字ですらすらと短時間で書けた。ただ、パソコンのワープロ機能のコピペをふんだんに利用できたせいでもある。今回の「手書き」で1200字の文章作成は、パソコン慣れした私たちには厳しいとも言えそうだ。本番に備えて字数のわかるノートを何冊か買い込み、「手書きの練習」はした。第1問、第2問は、上述どおり練習すればするほど解答力はアップした感はあった。

戸惑いつつ、第3問対策を行った。昨年末頃~今年前半で新聞等の報道で話題になっている事柄を3つ選び、以下の予想問題を考えた。

第1予想:佐渡金山遺跡推薦

第2予想:ウクライナ侵略戦争と世界遺産

第3予想:危機遺産の登録抹消(リバプール等)

ただ、第3予想は、昨年既に出題されていることがわかり、「佐渡金山」と「ウクライナ」に絞ることとした。朝日新聞、読売新聞の関連記事を切り取り、スクラップブックに貼り付け、読み返して情報をアタマに入れる学習を行ったのだ。

〈試験会場は、上智大学〉

 7月3日(日)、いよいよ本番。マイスター試験の会場は、東京・名古屋・大阪の3か所のみ。したがって、東京での受験となるが、会場は上智大学。実は、上智大学四谷キャンパスは、1級で不合格だった、私にとっては縁起の悪い会場(昨年12月に場所を埼玉県に変えて1級合格した経緯あり)である。しかも、伝統校だけに、そのときは、古い教室で綺麗な印象はなし。しかし、今回の受験場所は、新しい6号館という建物の綺麗な教室であった。その教室には、大学生~20歳代くらいの若そうな人が多く、全部で60人くらいの受験生がいたようだ。やはり、大学受験よろしくびっしり書き込んだノートで最後の詰めをしている人を何人も見かけた。

〈論述試験、かく戦えり〉

さて、本番最大関門の第3問は、私の第1予想は見事にはずれた。第2予想「ウクライナ」に近い問題ではあったが、戦争一般と世界遺産に関する問い(平時だけでなく戦時においても文化財や自然環境の保護がどのような意味を持ち得るのか)であった。なにしろ1200字である。とにかく覚えて来たウクライナへのロシア侵略と世界遺産についての知識を書き始めた(試験の主題から離れているよなぁと思いつつ)。数百字埋めた頃になって、やっと求められた問いへの私なりの視点・意見を思いついたのである。それを書き上げるも、それだけでは500字くらいしか文量がない。結局、問いに対してストレートに解答したのは途中からのこの全文量の半分弱の文章であり、それ以外は「枝葉(えだは)」的な内容になってしまった。コピペがあれば、この主要文をアタマに移動してもっと格好のよい文章にできたが、消しゴムで前半分を消して書き直すのは時間的に難しいと判断し、既に書いた文はそのままとしたのだ。下書き用紙が配布されていたが、下書きしてから清書したのでは時間切れになると考え、いきなり解答用紙に書き始めたためでもある。実際には試験終了30分前に殆ど書き上げてしまっていた。(試験時間は120分なのだが、結果的には、第1問と第2問はあわせて30分で、第3問は1時間で書いたことになる)「昔取った杵柄」で、採点者に「読んでいただく」ものだから、なるべく丁寧に書くよう努めたが、つい時間を気にして早書きになってしまったことは否めない。少なくとも読めない文字はないようにはした(もともと字が上手な人が羨ましい)。

世界遺産検定HP過去問解説に、第3問の論述は「少しでも独自の視点があるものは高得点となった」と書いてあった。今回、採点者が私の答案の前半部分しか読まずに「こりゃ的外れだ」と判断したらこれでアウトだったであろう。おそらくは根気よく最後まで読んでくれたはず。後半になって、やっとマトモな解答文になって合格点の評価にしてくれたのであろう。採点者に感謝である。

(マイスター試験の合格基準は、総合点が合格基準を超えていることに加えて、第1問・第2問合計と第3問で各合格基準を超えていることが必要。したがって、いくら第1問・第2問が満点に近くても第3問が基準に達していなければ不合格となる)

〈私は幸運だった〉

 私の答案を辛抱強く読んでくれる採点者に当たったことだけでなく、今回の7月3日という試験日程も幸運だった。「受験勉強」は、6月に、主に6月後半の数週間に行ったのだが、6月はある程度時間的余裕があったのだ。コロナ第7波が来る前だったから。もし試験が1か月後の8月上旬だったら、十分な試験準備ができないまま試験に突入して不合格の憂き目に遭った可能性が高い気がする。7月は、第7波によるPCR検査件数の急増に加えて、4回目のコロナワクチン接種の数も増大し、昼休みもなく、診療後の夜遅くまで残業せざるを得ない日々が続き、疲労困憊し、勉強する意欲は消失していた(この状況は8月の今も継続している)。