佐渡金山推薦書不備は官僚の質低下のためか

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の政治・行政論(37)

世界文化遺産候補として政府が推薦した「佐渡金山遺跡」の登録が困難になった。韓国政府の反発のためではない。なんと推薦書の不備が原因だという。20年以上の努力の末、本年1月末に推薦が決まって歓喜した地元の方々の落胆には同情を禁じ得ない。

ユネスコが指摘した不備は、金山を構成する水路についての説明の一部が欠落していたという。世界文化遺産の推薦に関する書類は、文部科学省文化庁の官僚達が作成したはずだが、誠にお粗末と言わざるを得ない。文化庁のみならず、各省庁の官僚達が準備作成する法案等国会関係資料でもミスがあることが指摘される報道もある。私が官僚だった1980年代には、天下り等で官僚バッシングはあっても、このような事務処理のお粗末さで批判されることはなかった。当時の私たち官僚は、国会等に出すような重要な資料には、毎日深夜まで一字一句ミスがないよう細心の注意を払ったものである。官僚に求められる資質は、創造性でも奇抜性でもなく、政治家の方針に従い、決められたルールに則って正確に事務遂行する能力である。(そういう能力なら私にもあったと自負している)

国家公務員総合職受験希望者の減少、若手官僚の退職者の増加、更に言えば官僚産出最大学部の東大法学部(文Ⅰ)入試の不人気→易化、とすべて官僚の質低下に連動する傾向ばかりである。官僚にやり甲斐を持たせるような待遇改善(例えば国会待機を激減させるとか)を行わなければ、この傾向が続くことは必定であり、さすれば、今回のような「お粗末」失態を繰り返すこととなるであろう。