原爆資料館が変わった 

・・・・・・・・・・・・・河辺啓二の社会論(32)

〈サミットのあった広島へ〉

盆休みを利用して、広島を訪れた。今年はなんと言ってもG7・サミットが日本の広島で行われた年なのだ。ウクライナ侵略戦争でロシアが「核」をちらつかせている現状において、人類最初の被爆地ヒロシマでサミットが開催されることの世界へのインパクトは大きかったはずだ。

世界遺産でもある原爆ドームは以前と変わりなかったが、原爆資料館(正式には広島平和記念資料館)の展示内容が変更されていた。ここを見学するのは何度目であろうか。

〈初めて見たときの衝撃〉

生まれて初めての見学は、今からウン十年も前、まだ小学生だったときだ。夏休みで広島の親戚の家に行った際(愛媛県から県外に出た初の旅)だと記憶している。そのとき広島城等も訪れたはずだが、ここ原爆資料館のこと以外は全く覚えていない。感受性の高い十歳前後で目の当たりにしたゲンバクの悲惨さはあまりにも衝撃的であった。特に被爆・被曝した人のすさまじく悲惨な姿が蝋人形で再現されていて、河辺啓二少年の脳裏に深く焼き付いたものだ。

その後成人になって同資料館を訪れたのは、官僚時代に研修旅行で中国四国を回ったときだったかなぁ・・・、ほとんど覚えていない。

〈リニューアルされた原爆資料館〉

 7年前(2016年)に訪れたとき改修工事中で半分くらいしか観られなかったような記憶があるが、そのときの工事内容だったのだろう、4年前(2019年)にリニューアルとなり、私が少年時代に衝撃を受けたような強烈な展示物は撤去されて(別の所に保管されているらしい)、ややマイルド化された印象だ。過激なので蝋人形展示をやめたのかと思いきや、従来の被爆再現人形より「本当はもっとひどかった」「見る人によっては実際より軽く受け止められかねない」などといった被爆者からの批判が理由らしい。

 被爆者が着ていた衣服や爆風で曲がった鉄骨などの実物、火傷の写真、遺品、遺族の悲しみが表される展示物のほかに、被爆直後の現場を描いた絵が多数展示されていた。プロの画家が描いたものではないのですごく上手な絵とは言えないものの、目の当たりにした生々しい惨憺たる人々の姿を私たちの心を打つには十分な筆致で描かれていた。

 私は音声ガイドを聞きながら歩き回った。その音声ガイドがすばらしい。国民的大女優の吉永小百合が発する被爆者の台詞が耳に染み入るものであった。

 更に、見学コースの最後には、原爆開発の歴史や核兵器の現状についても学べるコーナーもあった。

〈全国の若者達よ、来たれ〉

今年サミットのあった広島で、夏休み・お盆休みということもあり、館内はかなりの混雑ぶりだったが、覚悟していたよりは待ち時間は短かった。若い人たちが沢山熱心に見学していた。これからの日本を背負う全国の小中高生等若者達でまだここに来たことのない人は是非訪れてほしいものだ。

G7の首脳たちがこの資料館を訪れた。核非保有国はともかく、核保有国(米仏英)のトップ達はどんな感想を抱いただろうか。しかし、残念なことに、彼らは一部の展示物しか見ていない。殆どのメンバーは遺品や遺族の証言展示の「本館」は訪れていないのだ。そういう点では100点満点のサミットではなかった。もちろん最も見学すべきは、我が国に近い複数の核保有の独裁者国家のリーダー達なのだが。